水中にすむ妖怪。名称は、他にカワコ・カワランベ(河に童子の意を加えたもの)・ガメ・カワツソウ・エンコウ(動物をあてたもの)・スイジン・ミツツドン・ミズシ・メドチ(水神の意)など。その伝承は広く全国に分布。
形状は各地で著しく異なるが、一般に童子の姿で、いわゆるおかっぱ頭に水をたたえた皿をのせている。水かきで水中を泳ぐが、陸も自由に動く。腕は左右通り抜けていて伸縮自在だとも、抜けやすいともいわれている。水中にひそみ、人や牛馬の尻を抜くと恐れられ、胡瓜など夏の作物を好み、金物を嫌う。相撲好きで人にいどむ。
失敗譚も多く、人馬にいたずらをして逆につかまったり腕をとられたりする。その際に魚を贈ったり、接骨薬の秘伝を伝授したりする話は、河童駒引譚とともにひろく伝えられている。
また、河童は田の水をつかさどり、田の仕事を助けることもある。西日本の各地で、河童が秋冬は山にすみ、春夏は里にすむと伝える点は、田の神去来の信仰と対応する。河童は、小さ子たる水神童子の零落した姿であったろうと考えられている。かつて水神の化身、もしくは使者として信仰され、今でも各地で水神として祭られている。しかし、信仰の衰えに従ってしだいに妖怪に零落し、文芸・絵画の材料にもてはやされ、名称・特徴ともに一般化される傾向にある。